売買契約を解除したら手付金はどうなるの?
不動産売買契約を結ぶ際、多くの場合「手付金(てつけきん)」が授受されます。手付金は契約成立の証であると同時に、契約を解除する際の「解約手付」としての役割を持ちます。では、もし売買契約を解除することになった場合、この手付金はどう扱われるのでしょうか。ここでは、売主と買主、それぞれの立場から解説します。
1. 手付金の基本的な役割
不動産売買契約では、契約時に売買代金の一部として手付金を支払うのが一般的です。金額は物件価格の5〜10%程度が目安です。この手付金は、
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契約成立の証拠
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違約時のペナルティ
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自由解除権の確保(手付解除)
という3つの役割を持ちます。
特に③が重要で、「相手が契約を履行する前までなら、買主は手付金を放棄、売主は手付金の倍返しで解除できる」というルールが民法で定められています。
2. 買主の立場から見た解除と手付金の扱い
買主が契約後に「やっぱりやめたい」と考えた場合、手付金を放棄することで解除できます。
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例:3,000万円の中古戸建を購入予定、手付金300万円支払済み。契約後2週間で事情が変わり、購入を断念。→手付金300万円は返ってこない。
この場合、違約金の追加請求はなく、支払った手付金を失うだけで解除が可能です。ただし、売主が既に引渡し準備を完了し、履行に着手している場合は手付解除はできず、契約違反として別途違約金が発生する可能性があります。
3. 売主の立場から見た解除と手付金の扱い
逆に売主が契約後に「やはり売るのをやめたい」と考えた場合、受け取った手付金の倍額を返還すれば解除できます。
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例:手付金300万円受領済み→解除する場合は倍額の600万円を買主に支払う必要あり。
売主の倍返しは、買主の損失補填の意味合いがあり、解除のハードルは高めです。そのため、売主が事情により売却を取りやめるケースでは、手付金の倍返し負担がネックとなり、契約続行を選ぶことも少なくありません。
4. 双方に共通する注意点
手付解除は「履行の着手前」までしかできません。履行の着手とは、引渡し準備や登記手続きの開始など、契約の実行に向けた実質的な行為を指します。このタイミングを過ぎると、解除には相手の同意が必要となり、違約金や損害賠償請求の対象になることがあります。
5. 実務での留意点
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契約書の記載内容を確認:手付金の額、解除期限、違約金の条項などは契約書ごとに異なります。
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口頭ではなく書面で解除意思を伝える:トラブル防止のため、解除通知は書面やメールなど記録が残る形で行うことが重要です。
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仲介業者を通す:直接交渉は感情的な対立を招くことが多く、プロを介した方がスムーズです。
6. まとめ
売買契約の解除において、手付金は「買主は放棄」「売主は倍返し」というシンプルなルールが基本です。ただし、この権利は履行の着手前までしか行使できません。解除の判断は慎重に行い、必ず契約書の条項と実務の流れを確認することが大切です。
不動産取引は高額で複雑な契約です。契約解除は双方にとって経済的・精神的負担が大きいため、可能であれば契約前の段階で十分に条件や事情を整理しておくことが、トラブル回避の最大のポイントといえるでしょう。
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