土地区画整理事業とは?売却前に知っておきたい基礎知識
「土地区画整理事業(とちくかくせいりじぎょう)」という言葉、聞いたことはあっても、具体的に何を指すのかよくわからない方も多いのではないでしょうか。
とくに土地や家を売却する場面で「この土地は土地区画整理事業の施行区域内です」と言われても、すぐにピンとこないのが普通です。
今回は、不動産売買において売却物件が土地区画整理区域内だった場合、売主・買主それぞれにどんな影響があるのかを、専門用語をできるだけ使わずに解説します。
土地区画整理事業ってなに?
一言でいうと、「土地の形や道路、公園などを整えて、街全体を住みやすく整備する事業」です。
古くからある住宅地や農地などを、行政や組合が主導して“整理整頓”するイメージです。
具体的には:
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細かく入り組んだ土地を整形(四角く)し直す
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道路や公園、排水などインフラを整える
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一部の土地を提供(減歩)して全体の利便性を高める
ということが行われます。整理が終わると、きれいな区画の住宅地になり、土地の価値も上がることが一般的です。
売却不動産が区域内だった場合、何が起こる?
この「土地区画整理中の土地」は、普通の土地と少し扱いが違います。
たとえば、売買対象の土地が、まだ整理事業の途中だった場合には、以下のような状態になっていることがあります:
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法務局上の地番と実際の使用地がズレている(仮換地)
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境界が確定していない
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今後、土地の一部が道路に使われる可能性がある(減歩)
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換地(場所の移動)の対象となることがある
このような状態では、権利関係が流動的であるため、買主としては「本当に将来そこに建てられるのか?」と不安を感じるかもしれません。
一方、売主としても「将来地価が上がるかもしれないから、今は売り時じゃないのでは?」と悩む場面もあります。
【売主】のメリット・デメリット
■メリット
・整理後は土地の価値が上がる可能性があるため、「整理後の評価額」を根拠に売値を提示できることも。
・道路やインフラ整備が進み、魅力的な住宅地として買い手がつきやすくなる。
■デメリット
・整理事業中だと地番変更や境界が未確定な場合があり、買主が不安を感じることも。
・整理完了前の売却だと「仮換地」として売ることになり、説明責任が複雑になる。
・場合によっては一部の土地を失う(減歩)ため、思ったよりも手元に残る面積が減るケースも。
【買主】のメリット・デメリット
■メリット
・将来的に整備された住環境が期待できる(道路、公園、排水などが整う)
・区域内であれば、今後地価が上がる可能性も見込める。
・整理が進めば境界が明確になるため、資産として安心して保有できるようになる。
■デメリット
・整理完了前だと、仮換地などで実際に使える土地が不安定。
・減歩により、最終的な面積が減ることもある。
・建築が一時的に制限される場合がある(事業の進捗次第)。
・インフラ整備のために将来的な負担金がかかることがある(保留地処分などの費用負担)。
売却前にやるべきこと
売主としては、以下の点を確認しておくとスムーズです:
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「仮換地指定通知書」「換地図」「施行者からの通知」などの書類をそろえる
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現状の土地がどのような状態か(換地予定、減歩率、整理完了予定時期)を把握する
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不動産会社にも「整理事業区域内である」ことを正確に伝える
また、買主にとっても、購入前に以下をチェックするのが安心です:
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土地区画整理事業の進行状況(完了予定時期など)
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換地の内容や位置
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将来的な負担(費用や減歩)
最後に
土地区画整理事業は、長い目で見れば街の価値を高めるための重要な取り組みです。
しかし、その最中にある土地を売買するとなると、通常よりも確認事項が増え、注意が必要になります。
売主としては「事前説明の丁寧さ」が信頼に繋がり、買主としては「将来の見通し」に納得して購入できるかがカギになります。
不安な点がある場合は、不動産会社や土地家屋調査士、行政窓口と連携しながら進めるのがおすすめです。
区画整理中の土地での売却・購入を成功させるには、「情報の整理」がまず第一歩です。
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